フリーランスによる旧交の温め方

私は学生時代に「ジャズ研究会」という妙なサークルに所属していた。

サークルが妙なれば所属する人物もやはり妙であり、ギタリストからパイロットに転向した人物、永遠に「Aー」と発声し続ける人物、キラキラ女子、普通に見える主婦、音信不通気味の人など、例を挙げるとキリがない。「しね」しか発しない人物は現在良く分からないブログを書いている。

このような珍妙は珍妙故に、繋がりの重要性を理解しつつも定期的に集まろうという行動は起こし難いものなのだが、今回これが「冠婚葬祭以外でも集まろう」と云うのだから私としても参加せねばなるまい。

フリーランスの到着

その集まりは東京某所の居酒屋にて執り行われた。誰かが言った「ゴーストタウンかよ」という比喩は的を射ており、ゴールデンウィークにおけるオフィス街は寂しく、この一帯は現在「穴場」と化している。

私は少し遅れて会場に到着した。久しぶりに会った皆は開口一番「顔色悪い」だの「痩せた」だの罵声を浴びせてくるが、実際その通りなので否定はしない。尤も、体重計は持っていないので痩せたかどうかは分からない。不健康だけど健全だから問題ないと考えているが、その意図は外見から伝えることが出来ない。

齢を重ねるにつれアルコール耐性は弱まる一方だが、とりあえず生で良いだろう。左右の人数バランスを考えて主賓の隣に着座する。

そう、この集まりには主賓が居るのだ。トリガーと言った方が適切だろうか。冒頭でも触れたが、ギタリスト→パイロットという波乱万丈な人生を歩んでいる人物がおり、そんな彼の様子が気になった某主婦が彼と話したいがためにこの集まりが開催され、我々はついでに招集されたのである。

ついでとは言え、社会から浮き出しがちなフリーランスにも声が掛かるというのは、大変有り難いことである。良く分からないブログにも多少の効果はあるようだ。

歓談

遅刻が文化であるジャズ研だが、開始1時間もすれば全員集まるものだ。集合による乾杯をこなしつつ歓談は続く。職業柄、歓談の中にも仕事の種が転がっていないか探してしまうものだが、面々は流行りのサービスにも詳しい様子で面白アプリのアイデアが続出する。懐の深いことだ。

懐の深さといえば、某氏はサーフィンを始めたかと思えば「アプリ作りたいんだよね」みたいな話を持ち出すなどしつつ、そういえば結婚予定無いの?との質問には「今日結婚しました」との回答。ちょっと何を言っているのか良く分からない。

記者会見

当然の流れではあるが記者会見の時間が設けられた。公平を期す為に質問は一人一つ、順番に行われることになった。私は席次の都合で最後。オチである。この席次を選択したことを後悔した。先鋒と大将で質問の重みが異なるこの方式、一体何処が公平なのだろうか。

「今日結婚したとは一体どういうことか」

「配偶者はどのような人物か」

「馴れ初めは」

各種質問が投げかけられ、それに丁寧に回答する某氏。回答は気になるがそれよりも問題は私の質問内容である。オチだ。どうする。

仕方がない。

「幸せ?」

と尋ねてみた。一見無難な質問ではあるが、その回答は千差万別、無限の可能性がある質問だ。オチにうるさい研究員からもOKを頂いた。個人的にも某氏にとっての幸せは何なのか気になっていた。

「結婚してもしなくても幸せだよ。」

そう来たか。

「結婚とは幸せである」という虚構には全く騙されていない様子だが、そんな君でも結婚という手段を選ぶのだなぁ。

終宴

変わったようで変わらない面々と歓談を続けると、ラストオーダーの時間はやってきた。研究員屈指の敏腕営業マンは注文をこなしつつ集合写真を取ることを提案。妙人の集まりでも集合写真は撮るらしい。

某女子のiPhoneのLINEカメラにて集合写真が撮影された。後ほど気の利いたコメントと共にSNSにアップロードされることだろう。

親戚の集まりの様な緊張感も遠慮もない飲み会は、これにて終宴。またの機会に期待しよう。

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