風呂にバスタオルを持参し忘れた結果

残暑の厳しいこの時期はゆっくり湯船につかる気にもなれず、シャワーで簡単に汗を流して風呂場を後にした。

そこで初めてバスタオルを持参し忘れたことに気が付いた。これは大変まずい事態である。

まずい事態

バスタオルを忘れたのなら、バスタオルが置いてある場所に取りに行けば良い。普通はそうだ。しかし私は普通ではない状況下にいるのだ。

ここは自宅ではあるが、同時に他人の家でもある。要するにシェアハウスなのである。

一部の方には報告したが、私はシェアハウスの住人と化したのだ。引きこもり性能が高くコミュニケーション能力に乏しいこの私がシェアハウスの住人なのである。世の中何が起こるか分かったものではない。

つまり、シェアハウスであるが故に、濡れたまま全裸で自室へバスタオルを取りに戻るのは大変リスクが高い行為なのだ。

リスク

現在は深夜2時であり、皆寝ているのか静まり返っている。これなら全裸で自室に向かっても住人と遭遇する可能性は低い。

しかし、一たび遭遇したのなら下記の様なリスクが顕在化しかねない。

1. 前科が付くリスク

言わずもがな、わいせつ物頒布罪と認められる可能性がある。

2. 住居を失うリスク

犯罪者にはならずとも、住人裁判の結果次第では退去を命じられる可能性がある。

3. 居心地が悪くなるリスク

「全裸マン」の二つ名を拝命し、住み続けるには心臓に大量の毛を生やさないとならない事態に陥る可能性がある。拝命せずとも間違いなく普通に気まずい。

 

いずれも発生すれば致命傷が避けられないリスクであり、自室にバスタオルを取りに向かうのは不可能である。

仮に誰ともすれ違わなかったとしても、濡れたまま歩き回って水滴を廊下にばら撒けば後始末が必要となる。余計な仕事の極みだ。

対策

さて、バスタオルを取りに帰ることが出来ない以上、何らかの対策を考えなければならない。

対策案1. 乾くまで待つ

バスタオルが存在しない時代でも水浴びという文化はあった筈だ。水浴びの後、彼らは一体どうしていたのだろうか。特に何もせず乾くまで放置していたのかもしれない。想像上の彼らに倣い、ここでじっとしているのも良いかもしれない。

実際に実行したらどうなるだろうか。

残暑が厳しいこの時期なら気化熱により風邪をひく心配はないだろう。しかし、どれくらい時間が掛かるのかが未知数だ。そしてその間は間違いなく暇だ。

対策案2. バスタオルの代替品を利用する

パンが無ければケーキを食べればいいのだ。バスタオルの代わりになりそうなものを物色したところ、下記のものが見つかった。

  1. 着ていた服
  2. 着替え
  3. 足ふきマット
  4. 洗面所備え付けのハンドタオル

いずれもバスタオルの代わりにするのは難しい、ケーキではない乾パン未満の何かである。

(1.) は多少汗を吸っている上に、安安という安い焼き肉屋の臭いが染みついている。これで体を拭けばもう一度シャワーを浴びたくなるだろう。

(2.) は清廉潔白だが、これを使うと佞悪醜穢な (1.) を再び身に纏う必要がある。極めて微妙な選択である。

(3.) と (4.) は今日一日の任務を深夜残業までして果たしてくれた英雄だ。そっとしておこう。

対策案3. 住人を呼ぶ

そういえば、風呂場至近の部屋の明かりが点いていた気がする。きっと部屋の主である男性は起きているに違いない。彼を呼んでバスタオルを取ってきてもらうのはどうだろうか。

と思ったが、脱衣所から呼び声を上げれば眠れる獅子(が居るのかどうかは知らない)をついでに起こしてしまう可能性があるので、これは最後の手段とすることにした。

採用案

いずれも決定打にかける対策だ。仕方なく、対策案1と2をハイブリッドで実行することにした。

ある程度自然乾燥したところで着替えのトランクスをタオル代わりにし、その後ノーパンで部屋に向かう分には特に問題ないだろう。

暇な時間は脱衣所に備え付けの洗面台にて歯を磨き、髭を剃ることにした。

無駄に30分ほど掛けて歯を磨き髭を剃ったところ、体はほぼ乾燥しており、頭髪のみが濡れている状態となった。これなら代替タオルで事足りる。

こうして私は無事に自室へと辿り着くことが出来た。深夜の誰も知らない冒険は、誰にも知られることなくひっそりと幕を閉じた。

後日談1

彼は電気をつけたまま寝落ちしていたとのこと。

後日談2

という話を女性住人にしたところ、「全裸の男性と遭遇したらとりあえず殺してからその後のことを考える。」と仰せでしたので、実は死亡リスクも存在した模様。

これで殺されたら文句言えない。化けて出て陳謝したい。

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